宇宙ゴミとあなどるなかれ、危険極まりないスペースデブリ。
JAXAは日本の漁具技術を使った宇宙ゴミ除去システムの実験をこの秋に実施する。
もはや猶予がない!
1957年の初打ち上げ以来、寿命が尽きた人工衛星や宇宙船残骸、それらの衝突による自己増殖、傍若無心国の衛星実験など。
宇宙空間は膨大なデブリだらけだ。昨年滞在した油井氏は衝突回避で3度軌道変更したという。もはや猶予はないのだ。
日本が誇る宇宙ゴミ除去システム
一般にスペースデブリを除去する仕組みを「スペース・デブリ・リムーバル・システム(Space debris removal system)」と呼んでいる。
中国や北朝鮮、ロシアなど、デブリを増やしている国は別として(約90%ののデブリは彼らが生み出したものだ)、宇宙の平和利用を進める国は、宇宙ゴミ(スペースデブリ)を宇宙空間から除去する仕組みを研究している。
その中で日本は、世界でも先行しており、各国から掃除夫とバカにされながらも(本当にそう言われていた)、宇宙ゴミ掃除の具体的な実現に真剣に研究を続けていたのだ。
JAXAがこの秋に実施する方式は、電線でデブリを捕獲し、地磁気干渉で大気圏落下させる仕組みだ。
H2Aロケットなどで、除去衛星を複数基、宇宙空間に運ぶ。
図では4基運んでいる。
現在の計画では、落下させるデブリ1つにつき、除去衛星を1基使う。
つまり使い捨てということだ。
デブリ除去衛星から「導電テザー」という、漁網技術を利用した網目の導電性のひもをつかって、数トンの大型デブリを捕獲する。
ひもを長くし、負電位を与える。
実際には5~10kmもの長さまだが、今秋の実験では700mまでひもを伸ばす。
地磁気を横切ることで、ひもに誘導起電力が発生しデブリとともに落下していく。
図では、青い方向がデブリの進行方向だ。
高校で習った「フレミングの左手の法則」を思い出してほしい。
力の方向は親指だ。つまりデブリの進行方向とは逆の赤い方向に力を出したいのだ。
これがローレンツ力(F)だ。徐々にデブリは減速していき、ゆっくりと軌道を降下していく。
地磁気の軌道面の方向(B)は人差し指だ。図では緑色の方向で地球の自転方向。
最後に電流の方向(I)は中指だ。
導電性のひもを使って、デブリ除去衛星側に負電位を与えると、デブリ側に電流が流れる。
わかりやすいように、実際の左手で指し示してみる。
ご覧の皆さんもやってみると、実感できると思う。
ここで注意したいのは、決して落下方向にエネルギーをかけているわけではないということだ。
デブリの進行に対して逆方向の微弱な力で、100日以上かけて減速するのだ。
そうすると勝手に地球の引力で落下するという仕掛けだ。非常に省エネなシステムなのだ。
軍事的なキナ臭さに対応できる柔軟性
実はこのシステム、公表されてはいないが、減速させられる対象は、生きた衛星だって可能だ。
JAXAのFAQを読むと、ぼかして書いてある。
しかし、はっきりと言えることがある。
それは、JAXAが計画しているデブリ除去のターゲットがロケット上段部であることだ。
つまりそれは、人工衛星に他ならないのだ。
傍若無人な軍事国家の衛星たち
いよいよ、日本や平和国家が危険に晒された時、このミッションであれば、撃墜するわけでもなく減速させるだけなので平和解決である。
結果、落下するのは人工衛星本人の責任。実は日本の電線捕獲型落下システムは平和裏に宇宙防衛が可能なシステムともいえるのだ。
北朝鮮は、2016年2月7日に地球観測衛星「光明星4号」のロケット打ち上げを実施、沖縄上空を通過し宇宙空間で軌道に乗ったと見られている。
中国は、2007年1月11日に、中国の老朽化した気象衛星を、衛星攻撃兵器で破壊して、大量のスペースデブリを発生させた。各国から非難されている。