痛み止めを使わず、歯が自己修復され、痛みがなくなったらどんなに素晴らしいだろう。
虫歯の穴や、噛んだり磨きすぎてすり減った歯の象牙質は、痛みや知覚過敏を引き起こす。
本来、失われた象牙質の内側には、新たな象牙質(第三象牙質)ができることがわかっている。
これにより、象牙質の厚みを保って、痛みや知覚過敏を和らげているのだ。
象牙質の修復に必要なタンパク質「オステオポンチン」
失われた象牙質の修復には、接着性タンパク質である「オステオポンチン(OPN)」が必要である。
逆に、これがないと象牙質の修復は一切行われないことが、今回の研究で証明された。
世界初の偉業である。
実は、OPNがなくても、象牙質の芽となる「象牙芽細胞」は生まれている。しかし、修復象牙質を形成できないのだ。
理由は、OPNがない状態下では、象牙芽細胞がⅠ型コラーゲンを分泌できないためということだ。
PubMedに掲載
PubMedは、NLM(米国国立医学図書館:National Library of Medicine)にある、NCBI(国立生物 科学情報センター:National Center for Biotechnology Information)が作成している医療データベースだ。
PubMedは、世界の主要医学系雑誌等に掲載された文献を検索することができる。
PubMedのデータソースは、MEDLINEとNon-MEDLINEである。
MEDLINE(メドライン)は、PubMedを主に占める医療文献のソースである。
1954年以前のOLD MEDLINEと1966年以降のMEDLINEで構成されている。
Non-MEDLINEは、MEDLINEに収載されないもの、データ整備前のもの、出版社が直接提供するものがソースである。
例のごとく検索してみよう。
pubmed.gpv を開き、英文タイトル「Osteopontin is essential for type I collagen」で検索してみる。
検索結果がたくさんあって面食らうが、「PubMed」をクリックすれば、2番めに出てくる。
医療研究は関連する論文が多いので、しかたないのだ。
タイトルは日本での紹介よりシンプルだ。
「オステオポンチンは象牙質修復におけるI型コラーゲン分泌に必須です」
かな。
夢の虫歯治療薬「象牙質自己修復薬」の誕生か!
オステオポンチンは、象牙芽細胞が象牙質を修復するために必要なタンパク質である。
同時に、オステオポンチンを人工的に歯に添加すると、象牙質の修復に必要なⅠ型コラーゲンの形成が促進されることもわかったのである。
つまりこれは、夢の虫歯治療役の誕生を意味している!
もっと言おう。歯医者さんが要らなくなるということだ!
もういいだろう。高齢化と医療費の高騰で、民間薬局の薬を買って欲しいのだろうから、いいことずくめではないか!
この図は、虫歯で象牙質までボロボロの状態の歯だ。
これにオステオポンチン製薬を添加するとどうなるか。
将来は、薬剤によってオステオポンチンの添加を人工的に行い、象牙質を修復してしまうのだ。
研究者の偉業を讃えよう!
最後に新潟大学の画期的な研究をおさめたふたりの研究者の名前を讃えよう。
地味ではあり、選択に苦慮するが、目先の美人よりも喫緊の歯痛は優先するのだ。
- 斎藤 浩太郎
サイトウ コウタロウ / Saito K
新潟大学・医歯学系・助教
研究分野 歯学 - 大島勇人
オオシマ ハヤト / Ohshima H
新潟大学 医歯学系 教授
研究分野 歯学
今後のご活躍を願いますと同時に、民間薬局でOPN製剤が買えるようになることを楽しみにしています。
ちなみに、目先の美人とは、今のところ彼女をおいて他にいないだろう。