星などの天体が、ブラックホールに飲み込まれると、二度と出てこられない。
子供から大人まで宇宙ロマンを感じずにはいられないブラックホール。
このブラックホールが、近くの天体の表層をひん剥きながら、じゅるじゅると吸い込む現象を「潮汐破壊(ちょうせきはかい)」という。
元SF小僧の我々やアニメオタクたちには「ロッシュ限界」と言ったほうがピンとくるだろうか。トップをねらえ!で大興奮した記憶があります。
いままで休眠していたブラックホールが覚醒し、星を破壊しながら、吸い尽くす。
その後、まるでゲップのように吐息を漏らす。
あたかも呼吸するブラックホールの様子を詳細に観測したという研究報告が、このほど英科学誌ネイチャーに発表された。
以下はNASAの映像。
実はこの研究、私たち日本人にとっても喜ばしい。活躍した3基の天文衛星のうち1基を日本が運用しているのだ。
日本のX線天文衛星「すざく」。動画の1分10秒あたりをみてほしい。
以下はそのキャプチャ画像。右上が「すざく」。軽自動車のようにおちゃめな衛星である。
また、動画に出てくるリケジョ(理系美女)は、研究論文の主執筆者エリン・カーラ氏(メリーランド大 ハッブル特別研究員)。
ん? 美女だよ。2分10秒あたりの笑顔なんか、とてもチャーミングだと思うがいかがだろう。僕が選んだエリン・カーラのベストショットなキャプチャはこれだ!
なぜカーラ氏たちの研究が、話題を読んでいるのか。
それはタイトルにも書いたブラックホールの吐息、この解釈が今まで間違っていたらしいのだ。
これまでも、活動しているブラックホールは、星を飲み込むとゲップのようなX線を出していたことがわかっていた。
しかし今回、休眠中のブラックホールが覚醒し、星を飲み込んだ様子を観測したことで、初めて、出ているX線が飲み込まれた星の残骸に由来することがわかった。
平たく言うと、吐き出されたゲップには飲み込まれた星の出がらしが写っていたということ。
つまり、休眠中のブラックホールの近くに残る、ゲップの組成を調べれば、宇宙がどうやって作られたかわかるかもしれないわけだ。
まあ、そういうことらしいのです。
潮汐破壊についても簡単に説明しよう。
お馴染みの地球の干潮と満潮、あれが超極端になったものと思えばよい。
海の満ち干きは月の引力のしわざだ。
地球から見て、月は周りをくるくる回っていて、その引力に海水が引っ張られ、うにょうにょ歪みながら潮の満ち引きが起きている。
なぜ海水だけが引っ張られるかというと、地球と月はお互いに回転しているから、その遠心力でバランスがとれており、近づくことも離れることもできず、流動体である水分を歪めるしかできないからだ。
と、ここまで書けば、引力が強ければ、海面だけでなく、地表も歪んで引き剥がされるとお思いだろう。その通りである。
月に面した地球では、海が偏って満潮になり、それでバランスが取れているというわけだが、月がブラックホールとなるとそうはいかない。引力が強大すぎるのだ。
星を吸い込む力もさることながら、それ以上に星の干潮と満潮を盛大にやらかす。
その結果、星本体より先に、星の表面を破壊しながら吸い込んでしまうというわけ。
そんなイメージで、NASAの動画を見ると、猟奇的ないきもののようにも思える。
地球の地震も、あながち潮汐破壊と無関係とは言えないのかな、と思ってしまいますね。
かつてビッグバンが起こって、凝縮されていた小さな粒の塊が、一気に宇宙空間へ広がっていった。
子供の頃は、ただそれだけでこの宇宙ができたと習ったのですが、あまりにも単純すぎて子供ダマシに思っていた。
でも今日からは違う。宇宙の組成がブラックホールによって、いつもどこかで再加工されている。
宇宙がブラックホールを使って、自らを新しいものに進化していると思うと、ロマンを感じずにはいられません。